カルチェラタン

第十三話 貝の火

企画:Familiar Company
作者:饗庭璃奈子(あいばりなこ)
比率:♂2♀3
時間:約20分

廃百貨店・カルチェラタン。
謎に包まれた〝貝の火〟を巡り、闘技者たちは人知れず、日々カルチェラタンで抗争をする。光を求めて闘い続ける、透明な子供たちの行く末は──。

《これまでのあらすじ》
桜庭嵐、コードネーム・旅人。異端の少年闘技者にして、誰も知らない貝の火の主。盲目の義父のため、彼は闘い続ける。嵐と敵対し続けてきた千景の本当の願いは、やがて訪れる罰から嵐を救うことだった。目的を違える友人同士の魂が、今ぶつかり合う。

※Skype上での声劇・ニコニコ生放送などで、ご自由にお使い下さい。
※企画などでご使用になる場合は、まずはご連絡下さい。

桜庭 嵐さくらば あらし
コードネーム:旅人。女性演者推奨。カルチェラタンの闘技者の一人で中学三年生。小柄で身体能力も低いが、最強の人形とうたわれるローズの主であり、カルチェラタンで畏怖されている。ナイフ〝スピカ〟を手に入れたことにより、ついに自らも闘う力を得る。
ローズヒップ・ジンジャー
まるで本物の人間のように精巧に作られており、自分の意思で喋り、動きもするが、人形である。嵐を主として付き従い、なんだかんだで嵐のことを慕っている。容姿は幼いが戦闘に特化しており、最強の人形とうたわれる。わりといつもむすっとしている。
君島千景きみしま ちかげ
コードネーム:ユダ。カルチェラタンの闘技者の一人。クラスは違うが嵐の同級生。ナイフ使い。頭がよく、身体能力も高い。嵐に固執し、たびたび奇襲を仕掛ける。飄々としていて掴みどころがなく、その行動原理は仲間ですら理解できないことも多いようだ。
猫娘
本名:魚住杏梨。カルチェラタンの闘技者の一人で、千景のチーム。嵐の同級生で、千景と同じクラス。身体能力は並だが、射撃において彼女の右に出る者はいない。マイペースで、ローズちゃんにぞっこん。麝香鼠とは犬猿の仲。背が低く、貧乳なのを気にしている。嵐が好き。
麝香鼠じゃこうねずみ
本名不明。カルチェラタンの闘技者の一人で、千景のチーム。歳は嵐たちよりちょっとだけ上。猪突猛進型で、いわゆる脳筋。馬鹿。とにかく馬鹿。しかし身体能力と動体視力はずば抜けており、肉弾戦ではトップクラスの実力を誇る。猫娘とは犬猿の仲。
千景

ねえ。そろそろ決着つけよーよ。嵐くん。

嵐(M)

その日、やってきた彼らは、いつもとは少し様子が違っていた。

(表題)「カルチェラタン 第十三話 貝の火」

千景

人を殺したんだってね。

まあね。

千景

どうだった?はじめて人を殺した感想、聞かせてよ。俺、人殺したことないからさあ。

別に……大したことなかったよ。ああでも、心臓をひと突きにすると、あんな冗談みたいに血が噴き出すんだね。ナイフ越しに伝わる、心臓の鼓動も。
あれはちょっと、はじめてで新鮮だったかな。

千景

まだ、殺すつもり?

そうだね。これが僕が求めるものへの一番の近道だってわかったから……殺すよ。

千景

そっか。じゃあ俺は、力ずくでも嵐くんを止めなきゃいけないな。嵐くんをこれ以上貝の火に近づけさせるわけにはいかないから。

……あはは、やっぱりこうなっちゃうんだね、僕ら。
今までの千景ちかげくんはどこか僕をおちょくってる節があったっていうか、奇襲仕掛けてきても手の内探りにきてるだけって感じだったけど、今は……違うよね。
全力で僕を、止めようとしてる。

千景

今までは手がかりも何もなかったし、決定打に欠けてたからね。だけど嵐くんみたいな子が人を殺し続けるって決意するほどなんだ。きみはもう、貝の火にチェックってところまできてるんじゃないかと思って。殺し続けることが近道、なんでしょ?そこまで口にしちゃったら、もうしらは切り通せないよね。今日はそれを吐いて貰うつもりだよ。

いつかこんな時が来るんじゃないかって、思ってた。そのために、武器も千景くんと同じナイフにしたんだから。きみと真っ向勝負でやり合うためにね。

千景

へえ、俺と真っ向勝負?嵐くんが、やれると思ってんの?

……やるよ。

千景

面白いじゃん。いーよ、やろーよ。ネコ、ネズミぃー。お前らは人形の相手、頼むよ。嵐くんが、俺とのタイマンをご所望みたいだからさ。

猫娘

(同時に)了解。

麝香鼠

(同時に)ラジャ。

悪いね、ローズ。二人も押し付けちゃって。

ローズ

今更何を惚けたことを言っておる。
嵐が武器を持つまでは、わらわがこやつらの攻撃を全ていなしていたのだぞ。
一人も二人も、大差あるまい。

あはは、そうだったね、ごめん……。
だけど、今の千景くんたちは本気だ。猫娘も、麝香鼠じゃこうねずみさんも。
今までの闘技とはわけが違う。

ローズ

今までと違うのはわらわとて同じ。あるじの犯した罪が、わらわの力の糧となるのだ。嵐が犯した未だかつてなく大きな罪、今、わらわの内で焔となって燃え盛っておる。
こやつら二人など、今のわらわの敵ではない。

……そうだね。頼んだよ。

麝香鼠

何をこそこそやってんのか知らねえが、とっととこっちの相手して貰おうか?人形。

猫娘

悪いけど、今日は本気出させて貰うよ、ローズちゃん。
ちょっと壊しちゃっても、許してね。

ローズ

笑止。お前たちごときが今のわらわに本気で勝てるとでも?

麝香鼠

おうよ。勿論、そのつもりだけど?じゃなきゃ、そもそもここに立ってねえし。

猫娘

ローズちゃんの強さは、嫌ってほど知ってるあたしたちだよ?手足の一・二本くらい落とすつもりでいかないと、ローズちゃんは止められないからね……!

麝香鼠

人形一人相手に、俺らが尻尾巻いて逃げ出すとでも思ったか?残念、こちとら負ける気なんてさらさらないんでな。たまには本気の勝負、しようぜ?人形。

ローズ

口だけは達者な奴らよ。よかろう、ならばわらわも本気で相手となる。やれるものならばやってみよ。お前たちはわらわに傷一つつけられぬまま、わらわに倒される。

麝香鼠

ハッ!口ばっか達者なのはどっちだろうなあ?なんたって、今日の俺らは本気なんだぜ?
やってやんよ、おらあぁぁぁぁあっ!!!(攻撃)

ローズ

ふっ!(避ける)

猫娘

あたしとネズミ、反りは合わないけど、闘いの相性だけはどういうわけか抜群なんだよねえ。近接攻撃のネズミ、後方支援のあたし。ローズちゃん、見せてあげるよ。あたしたちの本気のコンビネーション!そんじゃ、いくとしますかぁっ!(発砲)

《嵐 VS 千景》

千景

さ、俺たちもはじめよーか、嵐くん。

……。

千景

……嵐くん?どーしたの?まさか今更になって足がすくんじゃったとか言わないよね。

……武者震いってやつかな。心が高揚して……どうしようもないんだ。
やっと僕と千景くん、本気でやり合える……!

千景

……変わったね、嵐くん。

あははっ、すごいや……!〝友達〟と、本気でやいば交えられるなんてさあっ!(攻撃)

千景

……っと!先手はそっちだね。でも、ナイフを持って日が浅い嵐くんと、ナイフ使いで通してきた俺、有利なのはどっちだろうねえ!?(競り合いながら)

こちとら、前科持ちなんでね……!負ける気はしないよ!(競り合いながら)

千景

っあは、確かに……!嵐くんの刃、人を傷つけるってことへの躊躇がまるでないや!手足切断したり人殺したりしてりゃ、そりゃそうだよねっ!(競り合いながら)

返す言葉もないよっ……!ところで、お喋りしてる余裕、あるのかな?ふっ!(攻撃)

千景

うわ!(避ける)

避けられた、か……。やっぱり身体能力じゃ、千景くんは僕とは格が違うね。

千景

……嵐くん?今、俺の腹に穴開けようとしたよね。

あははっ、ごめんごめん。でも安心しなよ。千景くんは〝友達〟だから、手足もちゃんと残しといてあげるし、殺しもしない。ただ徹底的に、甚振るだけだっ!(攻撃)

千景

……っ!

《ローズ VS 猫娘・麝香鼠》

麝香鼠

らぁっ!くっ!はあぁっ!(連続で攻撃)
……くっそ!どうなってる、なんで当たんねえんだ!

ローズ

ふん……!遅い!そのパワーと素早い立ち回りがお前の武器ではなかったのか?今のお前に攻撃を当てることなど、赤子を片手で弄ぶようなものよ!はぁっ!(攻撃)

麝香鼠

何!?ぐあぁぁあっ!!!(壁に叩き付けられる)

猫娘

ネズミ!

麝香鼠

ってェ……!片手で俺を吹っ飛ばすかよ……!何なんだ、こいつ……!?今までより格段に、スピードもパワーも上がってやがるじゃねえか……!

猫娘

どうなってるの……!?なんか変だよ……!

ローズ

よそ見をしていてよいのか?猫娘。ふっ!(攻撃)

猫娘

きゃっ!(攻撃を食らい、倒れる)うそでしょ……!?今の今までネズミのところにいたはずなのに、たった一瞬のうちにこれだけ距離を詰められるなんて……!

ローズ

悪いな、猫娘。今日はお前も、動きを封じる程度には痛めつけてやらねばならぬ。

猫娘

っ!、舐めないでよね、くっ……!(発砲)

ローズ

お前の弾も、遅くなったものだな。

猫娘

え、かわされた!?この至近距離から撃ったのに……!?

麝香鼠

隙ありっ、うおらあぁぁぁあっ!!!(攻撃)

ローズ

甘い、ふんっ!(迎撃)

麝香鼠

うおあ!(避ける)……っぶね!ちィッ、これを見切るかよ……!

ローズ

背後から強襲のつもりか?甘く見られたものだな。かような闘技、あまり長引かせても仕方あるまい。ではそろそろ、本気で行くぞ。覚悟はよいな?麝香鼠、猫娘。

猫娘・麝香鼠

……!

《嵐 VS 千景》

千景(M)

なーんか、あっちの様子がちょっとおかしいみたいだねえ。ネコとネズミ、あの二人の本気が、お人形さん一人に押されてる……、っ!!

他に気を取られてると怪我するよ?はぁっ!(攻撃)

千景

ッ……!(掠る)

……まずは僕が一撃。初心者だからってあんまり舐めて貰っちゃ困るよ、千景くん。

千景

舐めてるつもりは一ミリもないんだけど、ねっ!(攻撃)

うっ!(掠る)

千景

お返しだよ?嵐くん。これで同点、おあいこだね。

……っ!

千景

それよりさあ、嵐くん。ちょっと気になってることあるんだけど。

……何?

千景

きみ、あのお人形さんに、何かした?

……!、クスッ。さあ……?僕は何も?

千景

……っあは、読ませてくれない、ねえっ!(攻撃)

くっ……!(かわす)

《ローズ VS 猫娘・麝香鼠》

ローズ

猫娘の遅い弾はさほど恐れるまでもない。まずは邪魔な貴様から、片付けてやろう。

麝香鼠

はっ、やれるもんなら、やってみなァッ!!!(攻撃)

ローズ

ふんっ!(受け流す)

麝香鼠

うお!?すかした!?

ローズ

全てはわらわの思惑通り!はあぁぁぁぁあっ!!!(回し投げ)

麝香鼠

なっ、ぐはぁっ!(叩き付けられる)

ローズ

貴様の馬鹿正直なほど真っ直ぐな攻撃を逆手に取った回し投げだ。パワーを活かしきるための立ち回りすら忘れるとは、少々冷静さを欠いているようだな。
わらわはさほど力を込めてもおらぬが……どうだ?少しは効いたか?

麝香鼠

……っ、まだまだァっ!(攻撃)

猫娘

あたしだっているんだからね!……んっ!(発砲)

ローズ

!!(かわす)ちぃっ……!鬱陶しい弾よ……!

麝香鼠

へっ……お前にしちゃ上出来だ、ネコ!

猫娘

あったりまえでしょ!こんなところでおちおち負けてらんないよ!
一人じゃ適わなくても、二人同時に攻めれば!

麝香鼠

ネコの言う通りだ。俺たちは今、〝二人〟なんだぜえ、人形?

ローズ

ふん。いいのか?猫娘。お前の弾が、麝香鼠に当たってしまうかもしれんぞ?

猫娘

そんなへましないよっ!あたしのコントロールなら、味方を傷つけることなんてあり得ない!だからこそ、あたしとネズミのコンビネーションは成り立つんだか、らっ!(発砲)

ローズ

ククッ、そうだな。こやつ程度の動きなど、お前の動体視力があれば見切ることなど造作もなかろう。確かにお前たち、戦闘において相性がよいのやもしれぬな。

麝香鼠

こンの……っ、舐めやがってぇっ!黙って一発食らいやがれ、人形ォッ!

猫娘

!!、ネズミ!真っ直ぐに突っ込んじゃ駄目!

麝香鼠

あ?、!!、しまっ……!

ローズ

実に愚かしい。はあぁぁぁぁぁあっ!!!(攻撃)

麝香鼠

やべっ、止まんね……!ぐあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!(手刀が肩を貫通)

猫娘

ひっ……、ネズミぃ!

麝香鼠

まじかよ……っ!、か、肩が……!チクショオッ……!

ローズ

……真正面からわらわの手刀の元に飛び込んでくるとは、学習能力のない奴よ。
さて……麝香鼠はこれでもう動けまい。残るはお前一人だ、猫娘。

猫娘

ネズミ……っ!うそ、でしょ……?

麝香鼠

……わり、ネコ。しくった。しばらく体が動きそうもねえ。ちょっと間ァ、もたせといてくれっか?ちっと休んだらすぐにそっち、いくからよ。

猫娘

……わかった。

麝香鼠

手間ァ、かけるな。

猫娘

大丈夫だよ。あたしだって、千景やネズミと同じ闘技者だもん。
……っ!(ローズに向けて銃を構える)

ローズ

猫娘。お前の身体能力は並だ。麝香鼠ほどの悪足掻きさえできるまい。

猫娘

くそっ……当たれっ……当たれぇっ!(発砲)

ローズ

無駄だと言っておる。何ならわらわとお前の力の差、今ここで見せてやろう。
やあぁぁぁあっ!!!(攻撃)

猫娘

うそっ……、きゃあぁぁあっ!!!!!(足に攻撃を受け、倒れる)

麝香鼠

ネコ……っ!

千景

!!、ネコ!ネズミ!

猫娘

っ……!、いったぁーい……!

ローズ

安心しろ。人間の娘に、血は流させん。せいぜい片足、骨が折れた程度だろう。
麝香鼠の方は……少々血を見て貰ったが。

麝香鼠

クソッ、ネコ一人に今の人形の相手は荷が重かったか……!
俺があんなへましなけりゃあ……!

千景

……!、……嵐くん。やっぱりきみ、あの人形に何か仕込んだよねえ?じゃなきゃ、ネコとネズミがあんなにあっさりやられちゃうわけない。
武器を持っても戦略家・旅人は、健在だったってわけ?

……ごめんね、千景くん。

千景

え、何?

僕、最初からきみのこと裏切ってた。

千景

は?何言ってんの、裏切り者のユダは俺でしょ。

(被せて)僕はさ、自分の目的のために、ずっときみを騙してたんだよ。他の人の求める光を踏みにじってでも、僕自身の目的を叶えるために。
だって最初から、貝の火は僕の手の内にあったんだから。

千景

え?

ローズが貝の火なんだよ、千景くん。

千景

……!?

猫娘

え!?

麝香鼠

な、に……どういうことだ……!

人形が動くなんて、普通に考えておかしいと思わなかった?
……ローズ、見せてあげて。

ローズ

御意。(千景に歩み寄る)

千景

……っ、

ローズ

そう身構えずとも、わらわは主の指示に従う。お前に危害は加えん。
わらわの右目を、覗いてみよ。

千景

……、!!

ローズ

これが、貝の火。主の積み重ねてきた罪を糧とし、今はより一層激しく美しく燃え上がっている。これこそがわらわの息吹の源。わらわは貝の火の意志により動く傀儡くぐつだ。

麝香鼠

罪が、糧……!、人形がやけに強くなってたのは、そういうわけかよ……!

猫娘

人を殺すこと……最も大きな罪を犯したから……?

この焔を燃え上がらせるために、僕は罪を重ねてきた。これからも罪を重ね続ける。

ローズ

貝の火が最も美しく輝いた時、光は我が主のものとなるのだ。

千景

……ネズミ、ネコ。お疲れのところ悪いけど、この人形引っ捕らえるよ。俺がやるから、お前たちは嵐くん抑えるのと後方支援よろしくね。
どうせ直せるんだ、多少壊したっていい。

麝香鼠

……わかってらあ。俺もネコに休ませてもらってちったあ動けるようになったし、何も問題ねえ。やっと見つけた〝貝の火〟ここで逃がしてたまるかよ……!

猫娘

まさか、こんな近くにあったなんてね……!(足を引きずりながら立ち上がる)
見落としてたよ。ローズちゃんの存在自体、歪んでるってこと……!

ああ、僕とローズを引き離すつもり?だったら無駄だよ。
今、貝の火は僕を主と認めてるから。

麝香鼠

何……!?

猫娘

どういうこと……!?

ローズ

貝の火とはなかなかに気難しい代物でな。時にわらわにすら、その囁きの意図はかいせぬ。貝の火の所有者となるためには、貝の火自身に主と認められるしかないのだ。
そして今、貝の火に認められた所有者は、嵐。

つまり、例えローズと離れていても貝の火は僕のものだし、僕が殺せば焔は燃え上がるってこと。光は既に僕の手の内にあるも同然なんだよ、千景くん。

千景

……嵐くん……きみは本当に、変わっちゃったの……。

覚えてない?僕が父さんに貰ってきたもの、ちょっとずつ返していけばいいって言ったのは、千景くんだよ?あの言葉で、僕は決めたんだ。父さんのために生きようって。父さんに光を取り戻すためなら、僕はどんなことだってする。いくらでも、罪を重ねる。
僕はさ、空っぽで、透明なんだよ。父さんのためだけに生きてる、ただそれだけの存在なんだから。だから僕なんて、どうなったっていいんだ。

千景

……っ!俺はそういう意味で言ったんじゃないっ!

ローズ

?、ユダ……?

千景

嵐くん、きみは間違ってるよ……!……っ、俺は知ってる……。
このままじゃきみは、罰を受ける!そうでしょ!?

ローズ

!!、どうして、ユダがそれを……!?

……。

麝香鼠

千景……?

猫娘

ぁ……、

千景

貝の火の中で燃えてるソレ……〝罰のほのお〟ってやつだ。
貝の火は最初からきみの手の内にあった。そしてきみは、これまでずっと罪を重ね続けてる。このままいけば嵐くん、きみの行く先に待っているのは……破滅だ。殺すつもりなんでしょ、たくさん。その行いへの罰は、きっと生半可なものじゃない。

……やっぱりね。何か知ってると思ってたよ。いくら貝の火に一番近いって言われてる僕だからって、千景くんの僕に対する執着、ちょっと異常だったから。
どうやってそのことを知ったのか知らないけど、これは僕が自分で選んだことだ。罰を受けることと引き換えに、僕は父さんに光を取り戻す。

千景

……っ!まだわかんないのかよ!おじさんの一番大事な光は、そんなもんじゃないって!

……?、一番大事な、光……?

千景

……、本当にわかんないのかよ、嵐くん……っ!

何を感情的になってるのか知らないけど……とにかくこれで、千景くんたちに成す術はないってことはわかって貰えたよね。きみたちはもう、指を咥えて見てるしかないんだ。
僕がじっくりと罪を重ねて、光を手にするところをね。

千景

……。

戦意喪失、かな?猫娘と麝香鼠さんだけじゃ、もうまともに闘える状態じゃないし……この闘技、おしまいってことでよさそうだね。それじゃ、行こうか、ローズ。もっともっと、罪を重ねに。光はもう目前なんだ、僕もできれば急ぎたいしね。

ローズ

……主の意のままに。

それじゃあね、千景くん。もうきみとここで出会わないこと……願ってるよ。

◆嵐・ローズ、去る

千景

……っ、(地面に膝を突く)

猫娘

!?、千景!

麝香鼠

おい千景、どうした!?旅人にどっかやられたのか!?
……ッくう、痛ってえ……!

猫娘

……千景の傷は大したことないみたい。どっちかってとネズミのがやばいよ。
それより今は、たぶん……。

麝香鼠

……貝の火、か。

千景(M)

遅かった。俺は力づくでも、もっと早くに嵐くんを止めるべきだった。最初から何もかも、手遅れだったんだ。嵐くんは、罰を受ける。重い重い、罰を……。きみと過ごした時間が全部、真っ黒に塗り潰されていくような気がした。ただ、あの日きみが俺にはじめて見せてくれた笑顔だけが俺の中で今も鮮やかで、脳裏に灼き付いて離れなくて──、

to be continued.