カルチェラタン

第十一話 復讐の幽鬼

企画:Familiar Company
作者:饗庭璃奈子(あいばりなこ)
比率:♂2♀2
時間:約23分

廃百貨店・カルチェラタン。
謎に包まれた〝貝の火〟を巡り、闘技者たちは人知れず、日々カルチェラタンで抗争をする。光を求めて闘い続ける、透明な子供たちの行く末は──。

《これまでのあらすじ》
桜庭嵐、コードネーム・旅人。異端の少年闘技者にして、誰も知らない貝の火の主。父親のため、彼は闘い続ける。かつて完膚なきまでに叩きのめした、荒くれ者の鬼灯のチーム。そんな彼らが再び嵐の前に姿を現した。理由はただ一つ、復讐のみ。

※Skype上での声劇・ニコニコ生放送などで、ご自由にお使い下さい。
※企画などでご使用になる場合は、まずはご連絡下さい。

桜庭 嵐さくらば あらし
コードネーム:旅人。女性演者推奨。カルチェラタンの闘技者の一人で中学三年生。小柄で身体能力も低いが、最強の人形とうたわれるローズの主であり、カルチェラタンで畏怖されている。ナイフ〝スピカ〟を手に入れたことにより、ついに自らも闘う力を得る。
ローズヒップ・ジンジャー
まるで本物の人間のように精巧に作られており、自分の意思で喋り、動きもするが、人形である。嵐を主として付き従い、なんだかんだで嵐のことを慕っている。容姿は幼いが戦闘に特化しており、最強の人形とうたわれる。わりといつもむすっとしている。
鬼灯ほおずき
カルチェラタンの闘技者の一人。肉体派で鉄パイプを武器とする。隻眼。ゲス。かつて嵐&ローズと闘い、利き腕を失った。
猩猩しょうじょう
カルチェラタンの闘技者の一人で鬼灯のチーム。肉体派で寡黙。人並み外れた巨体が武器。 かつて嵐&ローズと闘い、敗北した。
嵐(M)

闘技の時間はいつだって、突然にやってくる。例えそれが僕らの望まぬ、因縁という名の数奇な螺旋に導かれたものだとしても。見覚えのある、大きくひしゃげた鉄パイプ。だけど前とは随分違うシルエット。纏う雰囲気も、以前とは比べものにならないくらいまがまがしい。かつて対峙し、僕の罪の糧となったはずの人。そんな人が再び僕の前に現れる理由はただ一つ──復讐だ。その日、僕らの非日常という名の日常は、がらりと色を塗り替えた。

(表題)「カルチェラタン 第十一話 復讐の幽鬼」

鬼灯

よお……久しぶりだねえ、坊やにお人形さんよ。

嵐・ローズ

!!

あなたたちは……!

鬼灯

へえ……?意外だな。てめえほどの奴が俺ごときのこと、覚えていてくれてんのかい?俺ぁ自分の身の程くらい弁えてる。てっきりてめえに俺の顔も、あの闘技とも言えない一方的な闘いも、それどころか存在すら、忘れ去られちまったかと思ってたんだがね。

……、一度闘った闘技者の顔は、それがどんな相手であろうと忘れたりしません。

鬼灯

……!、ぎゃはははは!それがてめえの、ぶっ潰す相手への礼儀ってか?
さすが天下の旅人サマは、心構えが違うねえ。

腕、が……、

鬼灯

ああ、これか?腕は……つかなかったよ。八咫烏やたがらすがすぐ医者んとこに運んでくれたんだがな、間に合わなかった。この通り、今は隻腕の鬼灯ほおずきよ。

ローズ

その八咫烏の姿が、見当たらぬようだが。

猩猩

あいつは……逃げた。あのあと程なくして、ここから逃げ出した。お前たちに恐れを成したのだ。あの狡猾な男は俺たちを裏切り、この戦場を捨てたのだ……!

鬼灯

まあそう憤るな、猩猩しょうじょう。俺とお前の後始末をして逃げてってくれただけでも、御の字ってもんよ。あいつがいなかったら、俺ら二人とも今頃、ここに立ってなかった。そこの幼女人形のおかげで、危うく死ぬとこだったんだからな。なあ、嬢ちゃん?

ローズ

急所は外してやったはずだ。嵐に殺すなと言われたからな。

鬼灯

ところがねえ、嬢ちゃん。人形のおめえにはわからねえかもしれねえが、人間ってのは血を流し過ぎれば死んじまう、実に脆弱な生きもんなのよ。
俺と猩猩はあれから暫く生死の境を彷徨って、どうにか生還したってわけさ。
どうだ、一つ勉強になったなあ、嬢ちゃん?

ローズ

その薄汚い口でわらわを気安く呼ぶな。穢らわしい。

鬼灯

おっと、そいつぁ悪かったねえ。人形の分際で矜持きょうじだけは一人前ってか、ぎゃはは!

猩猩

人形、貴様……!

鬼灯

ああ、いい、いい。おめえ、あんなことがあってまだ俺についてきてくれんのはありがたいが、その短気を少しどうにかした方がいいみてえだなあ。

猩猩

……すまない。この人形のこととなると、つい我を忘れてしまう。

鬼灯

まあ、気持ちはわかるぜ。俺もどっかの坊やのことを考えると、同じだからよォ……!

嵐・ローズ

……!

鬼灯

傷の治りが思いのほかよろしくなくってな。再びここに立つまでに随分時間がかかっちまった。あの埃くせえ医務室で横になってる間中、旅人サマよ。あの時、嬢ちゃんが俺の腕を吹っ飛ばしても平然と笑ってた、てめえの寒気のするような邪気のねえ笑顔が、何度も目の前にちらついた。膿んだ傷口が疼いて仕方なかった……!
なくしたはずの腕が、騒ぐのよ……!てめえを殺してえってなァ!!

……つまり、鬼灯さん。あなたがここに来た目的は、僕ですか。

鬼灯

何、これでもてめえに、感謝の一つくらいはしてんだぜ?てめえが俺を覚えていてくれたことに、祝杯をあげたいくらいだ!これで心安らかに、てめえに復讐できる……!この腕の落とし前、今こそつけて貰おうじゃねえの、旅人サマよォ!?
ぎゃっはははははははははは!!!

嵐(M)

狂気。一言で言うならば、今の鬼灯さんから感じられるのはそれだった。
普通に考えれば猩猩さんのように、直接手を下したローズに報復の矛先を向けるのがごく自然な人間の心理。でも、鬼灯さんは違う。今、鬼灯さんの目に映っているのは、僕だけだ。あの時僕が見せたたった一度の笑顔で、この人の心は壊れ、じっくりと時間をかけて僕への復讐心を膨れ上がらせた。歪んだ狂気に支配されたんだ。
その姿はまるで、復讐に囚われた、幽鬼。

……ローズ。猩猩さんの相手を頼むよ。僕は鬼灯さんの相手をする。

ローズ

向こうもそのつもりだろうな。……気をつけろよ、嵐。この男、ただ粋がっていただけの以前のこやつとは違う。容れ物は同じでも、中身がまるきり入れ替わってしまったかのように感じられてならぬ。あの時のこやつと同じと思って、かからぬ方がいい。

ああ、わかってるよ。ローズも、無事で。

ローズ

無論だ。

鬼灯

おお、嬉しいねえ。旅人サマ自ら、俺の相手を申し出てくれるってかい?

……これが僕の、あなたへの誠意です。あなたの心をここまで壊してしまったのは、きっと僕だから──だから誠心誠意、僕はあなたの相手になります。

鬼灯

ぎゃっはははははは!心が壊れた、か。面白いこと言うじゃねえの。確かに今の俺ァ、どっか心のたがが外れて、ぶっ壊れちまってるのかもしれねえな。なんたって寝ても覚めても、頭に浮かぶのはてめえのことばっかりなんだからよォ!!

……哀れ、ですね。

《ローズ VS 猩猩》

猩猩

人形……今日こそ俺は、お前を破壊する。

ローズ

それはこちらの台詞。再びここまで這い上がってきたお前たちの気概は賞賛に値するが、今宵こそお前を、再起不能にしてやろう。

猩猩

生意気な傀儡くぐつだ。そんなか細い贋物にせものの体、片手で捻り潰してくれる。

ローズ

猩猩。お前も復讐の心に捕われ、随分と変わったようだな。以前も大した男だったが、気迫からして比類にならぬ。だがわらわとて、以前のわらわとは違う。わらわはもう、あるじの指示に従い動くだけの傀儡ではない。自らの意志で闘う傀儡なのだからな。

猩猩

……そのようだな。旅人の武勇は、再三噂に聞いている。だがそれよりも、今は闘技だ。
早くお前を砕きたいと、俺のこの手が戦慄わなないている。

ローズ

ふっ。では、能書きはここまでとしようか。いざ……参る!

《嵐 VS 鬼灯》

鬼灯

聞けば旅人。てめえとうとう、武器を持ったそうじゃねえの。

……はい。今の僕は、ローズがいなくても闘う力を持っています。星屋ほしやさんに見繕って貰ったナイフ、スピカを。(ナイフを取り出す)

鬼灯

ふっ……、あははは……!ぎゃははははははは!!!
こりゃあいい!てめえの唯一の戦闘手段だったその〝人形使い〟っての、俺ァどうも気に食わなかったのよ。丸腰のてめえ相手にやり合っても、俺に残るのは何の力もねえガキをただボコったって事実だけだ。てめえ自身が闘う力を手にしてこそ、俺の復讐は成り立つ。てめえが武器を手にしたって聞いた時なんざ、嬉しくて震えたもんだ……!今もよ、ゾクゾクしてたまんねえのよ。てめえと正々堂々やり合って、この手で殺せる快楽になァ!!

本当に……壊れてしまったんですね。

鬼灯

さあ、早くやろうぜえ……坊や。
俺のなくした腕の渇きを、その血で満たしてやってくれよォ……!ぎゃっはははははははははははははは、っはァ!(嵐に向かって突進、鉄パイプで攻撃)

くっ!(跳び退く)

鬼灯

っらよォ!(攻撃)

うわぁ!(避ける)

鬼灯

どうしたどうしたァ!?けてばっかりじゃ面白くねえ、てめえからも何か仕掛けて来いよ!じゃねえと俺の腕は、満足しないぜえッ!(競り合いながら)

ちぃっ……!

嵐(M)

速い!以前とは段違いに!それにリーチが違い過ぎる……!このままじゃ、僕のナイフは鬼灯さんに届かない!しかも、それだけじゃなくて……!

鬼灯

食らいやがれ、おらぁぁぁぁぁあっ!(攻撃)

んっ!(避ける)

鬼灯

……とっと。壁にめり込んじまったか、っへへ……!

……っ!

嵐(M)

前にローズが吹っ飛ばしたのは、鉄パイプを持ってた〝右腕〟──鬼灯さんの利き手だ。つまり今、鬼灯さんが振るっているのは利き手ではない〝左腕〟。攻撃は大振りだけど、その分次の手が読めなくて、全神経を集中させなきゃとてもじゃないけど避けきれない……!

鬼灯

どうしたあ?坊や。変わり果てた俺を前に、手も足も出ねえってか?早くどうにかしねえと、てめえの軟弱な体は悲鳴を上げちまうぜえ?
もっと今宵の素晴らしい復讐劇を楽しませてくれよ、なあ……!?

嵐(M)

何か!何かあるはずだ!この状況を打破する策が……!

《ローズ VS 猩猩》

ローズ

やあぁぁあっ!(攻撃)

猩猩

ふんっ!(払いのける)

ローズ

わらわの攻撃をひと薙ぎ、とはな。だが休む間は与えん!たあぁぁぁぁあっ!(攻撃)

猩猩

利かん!(払いのける)鬱陶しい小蝿が、ちょこまかと小賢しい……!

ローズ

ふっ……、なるほど。どうやら貴様も少しは、腕を上げたようだ、なっ!(攻撃)

猩猩

(競り合いながら)当然!お前を破壊する今日この日のために、鬼灯より早く傷が塞がったのちも、鍛錬の日々を送ってきた!更に今、お前は旅人との共闘ではなく、単騎での勝負!旅人の策がなければ俺を倒せなかったお前を叩くことなど、造作も、ないっ!(攻撃)

ローズ

ぐあっ!(壁に叩き付けられる)

猩猩

……フウーッ……。まずは、一撃。

ローズ(M)

確かにこの巨人、以前とはわけが違う……!あの時は我を失って、ただがむしゃらに力任せな拳を振るうだけだったが、今のこやつの拳には理性がある!
そして、理性を備えた獣は……厄介だ。

ローズ

貴様、仇であるはずのわらわを前にして復讐の焔に身を焼かれても、その衝動を抑えることを覚えたようだな。今の拳も、よもや本気ではあるまい。手心を加えたな。

猩猩

普通の娘ならば、この一撃で仕舞いなのだがな。だがしかしお前は人形。この程度の攻撃ならば耐えきるだろうと踏んでの拳だったが、俺の読みは正しかったようだ。じっくりと甚振いたぶって、動けぬ程度に破壊してから、嬲り殺しにしてやろう。

ローズ

……っ!それが狙いか、野蛮な獣め……!

猩猩

何とでも言うがいい。この復讐心を満たすためならば、俺は鬼畜にも成り下がろう。何、相手は人形。いくら嬲っても心など痛まん。覚悟はいいか、傀儡の者。

ローズ

……無論だ、頭脳を得た巨人よ。

猩猩

では、行くぞ。……うおあぁぁぁぁぁあっ!(ローズに向かって突進)

《嵐 VS 鬼灯》

!!

鬼灯

あ?なんだア?

嵐(M)

そうだ、あるじゃないか!既に実戦で試したこともある〝策〟!テンパっててすっかり忘れてた……!駄目だ、少し冷静にならないと……!

……んっ!(体勢を低くして、構える)

鬼灯

お、なんだあ?やっと何かしてくれんのかい?おもしれえ、やってみろよ!

嵐(M)

今までの攻撃パターンを見る限り、隻腕となった鬼灯さんは遠心力に頼らなければ以前ほどのパワーは出し切れないのか、〝縦に〟振り降ろす攻撃は仕掛けてこない!
そして鬼灯さんと僕ほどの体格差があれば、体勢を低くして横方向の攻撃を搔い潜り、鬼灯さんとの距離を縮めることは可能!そうすれば……!

鬼灯

!?、何のつもりだ……!?そらよォッ!(攻撃)

残念、避けちゃうんだよねっ……!はあぁっ!(攻撃)

鬼灯

何……!?俺の攻撃を避けて、距離を……!?

嵐(M)

僕のナイフが鬼灯さんに、届く!

……っふ、(笑って、ナイフを鬼灯の喉元で寸止め)

鬼灯

……ぁ……!

……僕があとちょっとこの手に力を込めれば、喉が破れる。
そうしたらあなたは死ぬね、鬼灯さん?

鬼灯

……。

さて……どうしますか?
このまま降参するなら、僕はあなたに何もしません。でも、まだやるっていうんなら、腕か足をもう一本、切り落としてあげてもいいんですよ?
このナイフの切れ味は、もう実証済みなんですから。

鬼灯

……、ククッ。

……?

鬼灯

ふんっ!(嵐の脇腹を蹴り上げる)

ぐッ……!?(くずおれる)

嵐(M)

な、に……!?ここに来て鉄パイプを使わず、生身の膝蹴り……!?

鬼灯

今トドメを刺してりゃ、てめえの勝ちだったのになあ、坊や?その甘さが、仇になったねえ。忘れたのかい?俺ァ腐っても、〝隻眼の鬼灯〟──俺のチームは猩猩も八咫烏も全員が肉体派、力技のゴリ押しだけで勝利を摑み取ってきた。無論、この俺もなァッ!(蹴る)

ぅあッ!(食らう)

鬼灯

鉄パイプなんざ、相手を惑わすためのただの飾り。要は騙し討ちよ。俺の本当の〝武器〟、やっとてめえにお披露目する時が来たみたいだぜェ……!?(嵐の襟首を掴み上げる)

……ぅ……!

鬼灯

ぎゃっはははははは!ちびっこいのを逆手に取ったつもりだろうが、こうして襟首掴み上げちまえばてめえは地に足も着かず、成す術一つない!
この時が待ち遠しくて待ち遠しくて、たまんなかったよォ……!俺のこの身で、拳で!てめえをぐちゃぐちゃに叩き潰してやるこの時が、なァッ!(腹パン)

がはぁッ……!(食らう)

《ローズ VS 猩猩》

ローズ

!!、嵐!

猩猩

そっちに気を取られている場合か?人形。ぬぅっ!(攻撃)

ローズ

何!?ぐはぁっ!(壁に叩き付けられる)

猩猩

ふん、随分と甘く見られたものだな。俺の相手をしながら、主の心配とは。
お前が案ずべきは、我が身ではないのか?

ローズ(M)

まずい!嵐の身体能力では、あの状況に持ち込まれて鬼灯に反撃することは不可能!早くこの巨人を片付けて、嵐を助けなければ……!あのままでは……られる!

ローズ

……っ、どうやらじっくりと貴様の相手をしている時間はなくなったようだ。覚悟せよ、巨人!今度はその両腕、吹き飛ばしてくれる!
はあぁぁぁぁあっ!(攻撃)

猩猩

俺は衝動を抑えることを覚えた。そう言ったのはお前だぞ?今の俺に、理性を失った愚直な攻撃など、利かん!(受け止める)

ローズ

……っ!受け止めた、か。化け物め……!

猩猩

ははは……!これはいい。同じ状況になったことが、前にもあったなあ、人形?真っ向からの力勝負!以前のお前はこれで、俺に破壊されかけたのだ。旅人の策も得られぬ今、お前一人で俺を倒せるか?知っているぞ。この手に少し力を込めれば、お前の体は軋みを上げる……!

ローズ

ぐっ……!(ローズの体、軋む)

《嵐 VS 鬼灯》

鬼灯

ほら、どうしたどうしたァ?天下の旅人サマ、よォっ!(攻撃)

ッう!(食らう)

鬼灯

見せてみろよ、てめえの〝戦略〟……!それとも武器を手にして、その小賢しいオツムもなまっちまったかあ!?、っらぁ!(攻撃)

がッ……!(食らう)

鬼灯

ぎゃっはははははは!
あぁ、最高だ。最高だぜェ……!てめえの肉に俺の拳がめり込むこの感触……!てめえを嬲り殺しにできる快楽!ずっと待ち侘びてたんだァ……!たっぷり痛めつけて、じわじわとこの手の内で潰してやるよォッ……!(嵐を殴りながら)

……!

嵐(M)

やばい……視界が眩んで、意識が遠のく……。うまく、息ができない……。
……あれ、ナイフ?ああそうか、僕はナイフを持ってるんだ……。これだけ拳を振るわれても、これだけはしっかり握り締めてたなんて、っはは、我ながらすごいや……。……ナイフ……。……ナイフ?あれ……?これがあれば……、

……あははっ!

鬼灯

あ?

嵐(M)

なーんだ、簡単なことじゃないか。どうしてもっと早く、気づかなかったんだろう。これがあれば僕は、まだ勝てるじゃないか。──とても単純な、方法で。

《ローズ VS 猩猩》

ローズ

……ククッ。

猩猩

何……!?俺の骨が、軋んで……!?

ローズ

言ったろう?わらわとて、以前のわらわと同じではないのだ。主の罪を糧として、わらわの息吹の源である焔は育ち、より一層激しく強く燃えている。

猩猩

何の話だ……!

ローズ

貴様が知る必要はない。何故なら貴様はここで、終わるのだから。
……ふぅっ!(拳に力を込める)

猩猩

!?、……っぐあぁぁぁぁぁあ!手がっ……!

ローズ

文字通り、握り潰してやった。これで貴様がわらわを捻り潰すことはできなくなったようだな。さて……主のためにも、早く終わらせなくてはならぬ。
悪く思うな、巨人。

猩猩

……!!、ぁ……!

ローズ

終わりだ。はあぁぁぁぁぁあっ!!!!!(攻撃)

猩猩

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!!(食らう)

《嵐 VS 鬼灯》

嵐(M)

鬼灯さんはまだ、僕の手にあるナイフの存在に気がついてない。当然だ。これだけ嬲られ尽くされたら、普通は耐えきれず、ナイフを手放してしまっているはずなんだから。
しっかりと、を握り直す。切れ味はお墨付きなので、僕は確実に的を捕らえさえすればそれでいい。チャンスは一度きり。狙いを定めて──確実に。

◆SE:ブスッ

鬼灯

あ?

◆嵐のナイフ、鬼灯の心臓に突き立てられている。

鬼灯

……は?……っぁ……!うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!

ローズ

!?、なん、だ……、!?

嵐(M)

鬼灯さんの心臓が一度、どくんと大きく脈打つのが、ナイフを通じて伝わってきた。生あたたかいものが、冗談みたいな勢いで噴き出す。シャワーのように、僕の上に降り注ぐ。鮮血の雨を浴びながら、僕は僕の勝利を確信して、笑った。

……ゲーム・オーバー。

猩猩

……く……ぅっ……!(ローズにやられた痛みに耐えながら、身を起こす)
!!、ほお、ずき……?

鬼灯

……か……はッ……!(くずおれる)

ローズ

なんと、いうこと……。

僕の……勝ちだね、鬼灯さん。だって死人は、動けないからさ。

猩猩

鬼灯……?……鬼灯ッ!鬼灯ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!

……ふっ、(微笑む)

嵐(M)

はじめて人を殺したのに、僕の心は不思議と穏やかだった。猩猩さんの慟哭を聴きながら、ただ、静かな実感を覚えてた。
ああ、そうか。綺麗事なんか並べてないで、はじめからこうしてればよかったんだ。これが僕の目的を遂げるための、一番の近道なんだ、って……。

to be continued.