カルチェラタン

第八話 強さの理由

企画:Familiar Company
作者:饗庭璃奈子(あいばりなこ)
比率:♂4♀1
時間:約20分

廃百貨店・カルチェラタン。
謎に包まれた〝貝の火〟を巡り、闘技者たちは人知れず、日々カルチェラタンで抗争をする。光を求めて闘い続ける、透明な子供たちの行く末は──。

《これまでのあらすじ》
桜庭嵐、コードネーム・旅人。戦略と生き人形、ナイフ・スピカを武器とする異端の少年闘技者にして、誰も知らない貝の火の主。父親のため、彼は闘い続ける。今日はいつもと視点を変えて、嵐と敵対し、同時に同級生でもある千景の元に集う、彼らのお話。

※Skype上での声劇・ニコニコ生放送などで、ご自由にお使い下さい。
※企画などでご使用になる場合は、まずはご連絡下さい。

君島千景きみしま ちかげ
コードネーム:ユダ。カルチェラタンの闘技者の一人。クラスは違うが嵐の同級生。ナイフ使い。頭がよく、身体能力も高い。嵐に固執し、たびたび奇襲を仕掛ける。飄々としていて掴みどころがなく、その行動原理は仲間ですら理解できないことも多いようだ。
猫娘
本名不明。カルチェラタンの闘技者の一人で、千景のチーム。嵐と同じくらいの年頃。身体能力は並だが、射撃において彼女の右に出る者はいない。マイペースで、ローズちゃんが大好き。麝香鼠とは犬猿の仲。背が低いのを気にしている。無論、貧乳である。
麝香鼠じゃこうねずみ
本名不明。カルチェラタンの闘技者の一人で、千景のチーム。歳は嵐たちよりちょっとだけ上。猪突猛進型で、いわゆる脳筋。馬鹿。とにかく馬鹿。しかし身体能力と動体視力はずば抜けており、肉弾戦ではトップクラスの実力を誇る。猫娘とは犬猿の仲。
リデル
モブ。カルチェラタンの闘技者の一人で、メリルとコンビを組む。ナルシストで〝この僕が〟が口癖。残念なイケメン。
メリル
モブ。カルチェラタンの闘技者の一人で、リデルとコンビを組む。リデルに対してちょっとカマ臭い。残念なイケメン。
えんじゅ
モブ。カルチェラタンの闘技者の一人で、千景の隣のテナント。チャラい男性。声劇の場合はリデルと被り推奨。
歌鶇うたつぐみ
モブ。カルチェラタンの闘技者の一人で、千景の隣のテナント。真面目な男性。声劇の場合はメリルと被り推奨。
花薄荷はなはっか
モブ。カルチェラタンの闘技者の一人で、千景の隣のテナント。クール系の女性。声劇の場合は猫娘と被り推奨。

《千景・猫娘・麝香鼠 VS リデル・メリル》

リデル

フッ……とことん舐め腐った態度を取ってくれるね……!ちょっと名が通ってるからって調子に乗ってると痛い目見るってことを、この僕がきみたちに教えてあげるよ。
受けてみたまえ、おらあぁぁぁぁあっ!(千景に向かって突進)

千景

あーあ、ホント、めんどくさいなあ。俺、嵐くんにしか興味ないのにー。
はいはい邪魔だよー、っと!(攻撃)

リデル

ぎゃあぁぁあっ!!!!!

メリル

リデル!……くそっ!なら、そこの女を人質に……!

猫娘

どしたの?千景ちかげ。テンション低いねー。……てやっ!(銃で殴る)

メリル

ぐふゥッ!?おまっ!銃はそういう使い方するもんじゃないってお母さんに習わなかったの!?

猫娘

あっ、ごっめーん。でもきみごときに貴重な弾を使うのは勿体ないかなーって。
鈍器としてもなかなかいいもんでしょ?これ♪

メリル

くっ……!てェよォッ!顎がっ……!顎がァっ!

リデル

メリルーーーーーッ!このっ……!貴様らよくもメリルを!許さん!
メリルの仇今ここで、この僕が討つ!

メリル

リデル……ッ!きみって奴は、僕のためにそこまでっ……!

千景

俺は嵐くんとしかやり合う気ないのに、向こうから勝手に来ちゃうんだもんなー。
嵐くん有名人だから、しょっちゅうちょっかいかけてるとその気もないのにこっちまで名前が広まっちゃうのは困りもんだよー。ほーんと、うざったいよねー。

猫娘

ちょっかいかけてるって自覚はあったんだね……。さて!メリルくんが顎の痛みに耐えてるうちに、さっさと動きを封じてっと!(背後からメリル拘束)

メリル

……って、おわ!?
こら女!僕は今リデルの輝きにときめいているんだぞ!
邪魔するんじゃない!

猫娘

んんー?メリルくん、ちょーっと何言ってるかわかんないけど、とりあえずこうして抑え込んで銃突きつけとけば動けないっしょ?

メリル

!!、なん……だと……!胸が……ない!

猫娘

なっ……!誰が貧乳じゃ!撃つぞゴルア!

メリル

ちょ!さっき弾使うの勿体ないって!撃たないって言ったじゃん!

猫娘

問答無用!そりゃ、そりゃ!(銃で後頭部ガンガン)

メリル

あがっ……!だから銃はそういう使い方するもんじゃないんだって!
ていうかそれ、撃ってないし!殴ってるし!

麝香鼠

だからさあ、千景。あんたの旅人へのその執着は何なんだよ……。ふんっ!(攻撃)

リデル

がはぁっ!……なんてことだ!この馬鹿っぽい奴なら余裕でちょろまかせると思ったのに!

麝香鼠

ああん!?ゴルアてめえ誰が馬鹿だ、誰が!(首根っこ捕まえて腹を膝でゴスゴス)

リデル

あ……ちょっ……やめ!やめて下さいお願いします!やめてぇっ!

千景

えー、だって面白くない?彼。貝の火に一番近いって言われてるんだよ?ネズミもさあ、強い奴が好きなら、嵐くんに靡いちゃおっかなーとか、思ったりしないわけ?

麝香鼠

まさか。俺ァあんたにしかついてく気ねえよ。

千景

っあは、言うねえ。なーにがそんなにお前を俺に惹き付けてるんだか。

麝香鼠

……。

リデル

あの、お願い、ほんとやめて……っ、なんか物思いに耽りながら僕を蹴り続けるのやめて!

麝香鼠(M)

確かに俺ァ強い奴が好きだ。旅人にだって、全く興味がないわけじゃねえ。けどな、千景。俺があんたについてこうって思ったのは、あんたの強さだけが理由じゃねえんだよ。

リデル

だからやめてぇーーーーーっ!(フェードアウト)

麝香鼠

(表題)「カルチェラタン 第八話 強さの理由わけ

麝香鼠(M)

俺と千景が出会ったのは、千景がここに来てまだ間もない頃だった。
俺ァ馬鹿だから、貝の火なんざにゃ最初から興味はなくて、ただ好きなだけ暴れられて、強い奴とやり合えるのが楽しくってここに通い詰めてた。すげえ新入りが現れたって話を聞いた時も、俺はすぐに、そいつに果たし状突きつけにいったんだ。

麝香鼠

ようよう!ユダってのはてめえか?

千景

んー?そうだけど、俺になんか用?そこの馬鹿っぽそうな人ー。

麝香鼠

誰が馬鹿だゴルア!……まあいい。新入り!てめえ強いらしいな!俺と勝負しろ!

おいおい見ろよ。あの馬鹿、まーた意味もなくよそ様に喧嘩売ってる。
貝の火にこれっぽっちも興味なんかない癖によ。

歌鶇

ん?ああ、麝香鼠じゃこうねずみか。あいつ、強い奴には目がないからなあ……新入りに絡みにいったのも、他の奴らみたく〝洗礼〟じゃなくて、強い新入りが来たって噂でも聞いたんだろ。

花薄荷

でも、勝てるかしらね。麝香鼠、腕っ節だけは確かだけど……あの〝ユダ〟って奴、強いわよ。おまけに頭も切れる。一筋縄じゃいかないわ。

歌鶇

……ああ。ユダがここに来てからずっと、隣のテナントで〝洗礼〟を見てきた俺らは知ってる。ユダに勝てた奴は、未だ誰一人としていない。それどころか全員──完敗だ。

しかも麝香鼠、頭脳派との相性は最悪だからなあ。俺はユダの勝ちに一票!
さーてお前ら、いくら賭ける?

花薄荷

悪いけど、私はパス。

歌鶇

俺も。

なんだよお前ら、ノリ悪ィなあ!

花薄荷

だって賭けにならないわよ。みんなユダの勝ちに賭けるに決まってるもの。
脳筋の麝香鼠じゃ、狡猾なユダには勝てないわ。

歌鶇

負けても負けてもへこたれないのが、あいつのすごいところだけどな……。

ちぇっ!

千景

……ふーん?なんか自信ありそうだね。あんた、強いの?

麝香鼠

ったりめえだ!腕っ節じゃこのカルチェラタンで五本、いや三本の指には入るぜ!

歌鶇

はは、あいつも大概自信家だなあ……。

花薄荷

実際腕っ節はそれくらいの実力あるからね。しょうがないわ。

千景

確かに、知能とか知性とかそういうの全部、攻撃力に極振りしちゃった感あるねえ。
……いーよ、面白そうじゃん。受けて立つよ。

麝香鼠

へへっ、そうこなくっちゃな!

千景

それじゃあ早速……、(千景、立ち上がる)

麝香鼠

?、あんた、武器はないのか?

千景

あー、うん。武器、欲しいんだけどねー。何せまだ入って日が浅いもんだからさ、何も持ってないんだ。だから悪いんだけど、今日はこのままやらせて貰うよ。

麝香鼠

この俺に肉弾戦の真っ向勝負挑むってか。いよいよ面白くなってきたなァ!

千景

っていうかあんたさ、俺の前情報なんにも持ってないの?喧嘩売りにいく相手の手の内探りもしないなんて、本当に馬鹿なんだね。

麝香鼠

うるせえ!俺はこの目で、拳で!そいつの力を確かめたいクチなんだよ!

千景

……なるほどね。どうやらあんた、今まで俺に奇襲仕掛けてきた奴らとはちょっと違うみたいだ。他の奴らは〝新入りへの洗礼〟だとか何とか高尚なこと言ってきたけど、あんたはほんとに強い奴とやりたいだけってことね。いいねー、そういうの嫌いじゃないよ。

麝香鼠

俺を他の小賢しい奴らと一緒にすんじゃねえよ。洗礼だとか貝の火だとか、んなこたあどうでもいい。俺はただ、もっともっと強い奴とやってみてえだけよ!

千景

っあは、こりゃいいや!あんた、気に入ったよ。じゃあ俺も、全力でいかせて貰う。
細かいことは抜きにしてさ、俺と真剣勝負、しよーよ。

麝香鼠

気に入ってくれてありがとよ!そんじゃ、先手必勝、行くぜぇっ!(千景に向かって突進)

麝香鼠(M)

こいつの背格好からして、歳は俺より下、おそらく身体能力も俺より低い。何をそんなに騒がれてんのか知らねえが、その実力、俺がこの目と拳で確かめてやんよ!

麝香鼠

おらぁっ!(攻撃)……何ッ!?、消えた!?

千景

人柄って攻撃に出るもんなんだねえ。あんたさ、まっすぐすぎるよ。
そんな単純な攻撃、簡単に見切れる。

麝香鼠

!?、後ろ、だと!?

千景

はい次、俺の番ねー。そらよっ!(攻撃)

麝香鼠

!!、チィッ……!(跳び退く)

千景

避けた、か。へえ、なかなかやるじゃん。口先だけじゃないってことね。
ほら、どんどんいくよー。ふっ!(攻撃)

麝香鼠

っぶね!(避ける)

千景

あはは!いいねいいねぇっ!(攻撃)

麝香鼠

くっ……!(避ける)
……なるほどねえ、確かにあんた、肉弾戦の腕も相当なもんだ……!動体視力もスピードも、パワーもある!だが残念、俺の方が速いし強いみたいだ、なァっ!(攻撃)

千景

!?、ぐぅッ!(食らう)

歌鶇

ユダが攻めてたのに、麝香鼠の攻撃が入った!?

おいおい、まじかよ……!

麝香鼠

おらおら、そっちの番じゃなかったのかあっ!?(攻撃)

千景

はっ、やるね……!(避ける)

麝香鼠

その余裕のカオ、ぶっ潰してやんよォッ!(攻撃)

千景

っあは、やれるもんならやってみなよー。ちょっと油断しちゃったけど、何度仕掛けても、あんたのその単調な攻撃かわすのなんてわけないんだってば。(避ける)

麝香鼠

そいつァどうかな?

千景

!!、な……!?

麝香鼠

俺の攻撃が単純で単調だっつうんなら、裏を返しゃあちょっと立ち回りを変えれば、あんたのリズムは崩せるってこと、だよなァッ!?(攻撃)

千景

くっ……!(掠る)

麝香鼠

へっ、掠っただけか。だがあめえ!(攻撃)

千景

うッ!(食らう)

麝香鼠

動きが鈍ったみてえだなあ?まだまだ俺は止まらねえぜぇ!?(攻撃)

千景

……っ!(食らう)

麝香鼠

そらぁ!(攻撃)

千景

うぁッ!(食らう)

麝香鼠

でもって、攻めまくったら……このまま、ふっ、飛ばす!(攻撃)

千景

!!、かはッ……!(壁に叩き付けられる)

花薄荷

ユダが壁に叩き付けられた!

相当ダメージ食らってんぞ……!あいつがあんなにやられてんの、はじめてじゃねえか!?

歌鶇

まさかこのまま麝香鼠が勝っちゃうんじゃあ……!

麝香鼠

へへっ、どうよ!俺のパワー、その体で思い知ってくれたかよ?

千景

……っあは!

麝香鼠

あ?

千景

そういや、訊き忘れてたよ。あんた、名前は?

麝香鼠

名前ェ?……麝香鼠、だけど。

千景

ふーん、麝香鼠さんね。覚えとくよ。あんたの腕っ節は確かだ。今までここで闘ってきた誰よりも、断然強い。でも、今のあんたにあるのはそれだけだ。

麝香鼠

んだと……!?

千景

よっ……と。てて。(立ち上がる)
俺はさあ、こんなところで負けてるわけにはいかないんだよね。
イイコト思いついちゃったぁ。麝香鼠さん!そっち側は確かにあんたのフィールドかもしれないけど、この壁際は、俺のフィールドだよ。

麝香鼠

はあ?そんな逃げ場もねえ壁際が、あんたのフィールド……?
どう考えたって不利な戦場だろうが。

千景

戸惑ってるみたいだねえ。いいから試しに、かかってきてごらんよ。

麝香鼠

……!!、言われなくともっ!らぁっ!(攻撃)
!?、また避けられた……!?

千景

あんたの攻撃は基本的にまっすぐで、でもってパワーは本物だ。このクッソ固いコンクリの壁に、素手の拳がめり込んじゃうくらいにはね。

麝香鼠

なにィーっ!?……あっ、抜けねえ!このっ!このっ!

歌鶇

あー、やっぱり馬鹿は馬鹿だったよ……。

ま、あいつの馬鹿力じゃそうなるわなあ。

千景

で、俺がこうして壁を背に構えてれば、あんたの攻撃の立ち回りも大幅に制限できる。俺程度の動体視力とスピードでも、真っ正面からのあんたの攻撃を避けることは簡単。ま、予想以上にうまくいっちゃって、あんたは今身動き取れなくなっちゃってるわけだけど?

麝香鼠

んがあーーーーーっ!抜けねえーーーーーっ!

花薄荷

……。無様ね……。

千景

ホントはめり込んだ拳を引き抜く時に生まれる隙を突くつもりだったんだけど、その必要もなさそうだねえ。そんじゃま、これで終わりにしようか。……ふっ!(腹パン)

麝香鼠

がはぁッ……!

千景

さすがのあんたも、身動き取れないその状態で俺の渾身の一撃もろに食らったら、たまったもんじゃないよね?……っあは!勝負、あったみたいだね。

あーあ、つまんねーの!なんだかんだ言っても、結局こうなるわけね。

歌鶇

あはは……まあ、大体予想はついてたけどね……。

花薄荷

でも、麝香鼠にもうちょっと頭があれば、結果は違ってたかもしれないわね。
ユダにあんなにダメージ食らわせたの、あいつがはじめてだわ。

麝香鼠

……ははっ、降参だよ。噂通り、あんた、確かに強いわ。
不利な状況を、逆手に取るとはね。

千景

!、……へえ、あの一撃食らってまだ喋れるんだ。頑丈だねえ。

麝香鼠

よっ……と。(拳を壁から引き抜く)
今の衝撃で拳も抜けたし、やっと自由に動ける身になった。
いやー、酷い目にあったわ。

千景

もしかして、まだやるつもり?

麝香鼠

まさか。降参って言ったろ?男に二言はねえ、俺の負けだ。
今の俺じゃあんたには勝てねえってことが、よくわかった。

千景

……いさぎいいねえ。そーゆーところも、嫌いじゃないよ。
でもさ、あんた変わり者って言われない?

麝香鼠

ははっ、まあな!俺みたいなのは、ここじゃ珍しいかもしんねえ。
でもよ、それはあんたもだ。そうだろ?

千景

……!

麝香鼠

なあ、ユダさんよ。あんたと拳を交えて、俺ァ感じたのよ。
あんたの強さにはワケがある。……違うか?

千景

……っあは、ただ腕っ節だけが取り柄の馬鹿ってわけじゃあ、ないみたいだね。

麝香鼠

で、どうなんだよ。

千景

……、助けたい人がいるんだ。

麝香鼠

あ?、助けたい?

千景

その人を助けるためだけに、俺はここに来た。あんたが言ってた、他の小賢しい奴らと一緒だよ。俺はここで、貝の火を目指すつもり。……っあは、どう?幻滅しちゃった?

麝香鼠(M)

助けたい奴がいる。そう言った時のお前は、闘ってる時の余裕の態度、飄々とした言動がうそみたいに頼りなくって、一人ぼっちで、年相応の子供に見えた。
まるで寄る辺をなくした、迷い子みたいな——。

麝香鼠

……決めた。

千景

ん?

麝香鼠

ユダさんよ。一体全体どこのどいつを助けたいのか知らねえが、その話、俺も乗ったぜ。

千景

……え?

麝香鼠

ここで貝の火を目指してる奴らってのァ、己の私利私欲のためにハイエナみてえに目をギラつかせてる奴ばっかりよ。あんたみたいに他の奴のためってのははじめてだ。狡猾なオツムと人を小馬鹿にしたような態度の割に、まっすぐな目してんじゃねえの。……おもしれえ!そのどっかの誰かさん助けるのに、この麝香鼠様が一肌脱いでやろうじゃねえか!

千景

……!

麝香鼠

どうだ、ユダ。俺とチーム組んでみねえか?貝の火探すの、俺も手伝ってやんよ。さっきも言ったが俺は肉弾戦に関しちゃカルチェラタンでも指折りだ。
まああんたよりは弱いが、悪い話じゃねえだろ?

千景

……!、っあは!俺もあんたとなら、組んでもいいかなって気がしてたよ。

麝香鼠

んじゃ、決まりだ。これからよろしく頼むぜ、ユダ!

千景

よろしく、麝香鼠さん。俺、君島千景きみしまちかげっていうんだ。気軽に千景って呼んでよ。
俺も気軽にネズミって呼ぶからさ。

麝香鼠

おう、千景!……って、え!?本名!?

千景

それと、俺と組むならちょっとはずる賢さってのも覚えてもらうから。
これから毎日、俺と特訓ね……♪

麝香鼠

お、おう……ラジャ。

麝香鼠(M)

こうして俺と千景の、特訓と闘技の日々ははじまった。
俺の強みは、パワーの割に細身の体格。今までの俺の攻撃じゃ、それを活かしきれてない。まっすぐなだけじゃなく、千景との闘いの時に思いつきでやってみせた繊細な立ち回りを兼ね備えてこそ、俺の強みを活かすことができる。全部、千景に教わったことだ。千景がいなけりゃ、俺はここまで強くなれてなかった。
何より俺は、あんたの強さだけに惚れたわけじゃねえ。あんたの強さのワケに惚れたんだ。今更他の奴になんか、靡いてやるわけねえだろ?なあ、千景。

***

メリル

くそっ……!旅人に負けたからこいつらならって思ったのに!

リデル

フッ……貴様ら覚えておきたまえ!この借りはいつか必ずこの僕が!返してやるんだからね!というわけで、アディオース!(全力疾走)

メリル

えっ!?ちょっと待って、リデルゥーーーーーッ!(フェードアウト)

猫娘

あ、逃げた。

千景

結局あいつらも、嵐くんにやられた腹いせに俺らんとこ来たってわけね。
あーあ、やってらんねー。

猫娘

あははは……まあ、そういうこともあるよー。……ん?

麝香鼠(M)

千景がやたらと気にかけてる、あの旅人って奴ァ確かに強い。だが俺は、千景と旅人の決闘を目の当たりにしちまってから、あいつがそら恐ろしくもある。旅人は千景と同じ、まっすぐな目をしてる。あいつも決して私利私欲のために、ここにいるわけじゃあないだろう。
だが同時にあいつの目は、強烈な自棄をも孕んでいて──。

猫娘

ネズミー?なにぼーっとしてんのよ。馬鹿が更に大馬鹿に見えるわよ。

麝香鼠

うるせえネコ。……ちょっと昔のこと思い出してただけだよ。

猫娘

えぇっ、なになに!?ネズミも昔のこと思い出してアンニュイーになっちゃう時とかあるの!?その話興味あるなー♪教えなさいよっ!

麝香鼠

お前、その話をネタに俺をいじり回してえだけだろ……。誰が言うか。

猫娘

あーん、何よぉ、ネズミのケチー。
……あ、千景がこれからまた旅人くんのところ遊びに行くって。
早くしないと置いてかれちゃうよ?

麝香鼠

おいおい、またかぁ?あいつはストーカーかよ……。

猫娘

あははっ、みたいなもんかもね。ほらネズミ、早く行くよー!

麝香鼠

わーった、今行く。

麝香鼠(M)

ネコの言う通りだ。昔のことに思い耽るなんざ、俺らしくもねえ。
俺を千景の奴に惹き付けちまってる何か……か。
あいつの強さ、あいつの強さのワケ。
だけどよ、もっともらしいこと言って結局のところ、俺は迷い子みたいに見えたあの時のお前が忘れられなくて、まっすぐだけどどこか危ういお前を、放っておけないだけなのかもしれねえ。だが、それでいい。いつかお前がお前の助けたい奴を、ちゃんと助けてやることができるなら。──なあ。俺が必ずお前の目的、叶えさせてやっからな。
忘れんじゃねえぞ、千景。

to be continued.